Long Long Night Driving @Las Vegas [Kanab (U.S.)]

車の多いラスベガス市内で時間を失いたくなかったので、そのままハイウェイに乗り込んだ。
ラスベガスの街から北へ向かうハイウェイは真っ暗でなにもなかった。
町へ繋がる降り口はあったが、ガス・ステーションだけで併設のコンビニ、売店がない。
アメリカの「ハイウェイ」は町へのアプローチ部分にコンビニやファストフードなどがあるはずなのだが、どういうわけかそれがない。
どうやらネバダ州の田舎度合いを見くびっていたようで、ここでもチョットした悲劇の一端となった。

コーヒーぐらい飲ませろ~、とベガスで買わなかった恨み節を呟きながら暗い道を走り続ける。
あの~、夕飯まだなんですけど、といいながらFMのチャンネルを変え、気分のいい音楽で紛らした。
2時間走ってようやくガソリンスタンド併設の売店を見つけ、
トイレ・ストップとコーヒー、夕食代わりのドーナツを買い込み、再びアクセルを踏んだ。
与太話ですが、一時期、どこかの国で行列してた『Krispy Kreme Doughnuts』、
アメリカでは「ガスステーション・ドーナツ」として有名、並んで食べるものじゃないシロモノ。
ロングドライブのお供はドーナツ、というのがこの国の定番。

時計は22:30を指している、ナビには「目的地まであと2時間」の表示。
ということは日付が変わるか変わらないかのキワドイ時間帯に着くということだ。
ハイウェイの速度制限は60~80マイル、
時速100~130キロ制限なのだが、80マイルで走っていてもコチラはガンガン追い抜かれる。
あと2時間ということは200km以上先ということね。
やっと手にしたコーヒーとドーナツ、話し相手はFM局だけ、そんな暗闇のドライブは続く。
フライトでがっつり寝てきたので眠気はなく、「クルーズ・コントロール」が付いているのでラクだが、
成田から座り続けているお尻の肉がシンドかった。

結局、『カナブ』の町へたどり着いたのは12:20、ナビったら正確な性格なのね。
静かで暗い町、オンラインで予約していたモーテルへ。
目的の宿を探し当てるのに小さなカナブの町では時間はかからなかった。
ところがモーテルの事務所は明かりが消え、扉には鍵がかかっていた。
ノックをしても電話をかけても返答はない。
おいおい。

サンフランシスコでフライトを逃した時点でモーテル宛てに
「12時を過ぎるかも」とメールは送っておいたのだが、待っていてもらえなかったようだ。
こうなるとクルマで寝ることになるのだろうか、おいおい。
ロング・フライトとロング・ドライブのあと、シャワーも浴びられず、
クルマで寝るのは後の日程に響きそうなのでダメモトで他のホテルを訪ねてみることにした。
煌々と明るい光を放っていた『Holiday Inn Express』へ。
カウンターのベルを鳴らすと「バンドマン」という感じのお兄ちゃんが出てきてくれた、おそらく深夜番だ。
「空いてる部屋ありませんか?」
「今日は 満室なんです」
「Omg(オー・マイ・ゴッド)、今ベガスから来て、予約したモーテルへ行ったんだけど、
閉まってたんですよ、部屋がなくて困ってます。12時過ぎには着くって連絡入れてたんですけどね」
正確には「今日、日本から来た」のだけど、話しが長くなるので端折っておいた。

「それは大変ですね。でも今、もう1:30ですよ」
「!△@*?」
「ここはユタ州です、ベガスから来たなら時差が1時間ありますよ」
「あらら、じゃあ、こちらが12時の約束を守れなかったわけだ」
ネバダ州は太平洋標準時「Pacific Standard Time=PST」、=現在0:30、
ユタ州は 山岳部標準時「Mountain Standard Time=MST」、=現在1:30、
アメリカの国内の時差はフライトなどでは注意するが、ドライブではすっかりそのことを忘れていた。
悲劇はもはや喜劇になりつつある。
「他にこの時間でもチェックインできるホテルを知りませんか?」
「ちょっと知り合いに聞いてみますね」
そういうと親切にあっちこっちに電話をかけてくれた。
1軒目は「満室」のお答え、
そう、ここ「カナブ」は小さな町ながら『ザイオン国立公園』『ブライス・キャニオン』、
そして『The Wave』やトレッキングへのベースキャンプ・ポイントとして絶好のロケーションなのだ。
折しも秋のハイ・シーズン、ホテルに空きがないのは当然、空きがあるほどホテル数がないのが実状。
2軒目は誰も電話に出ない、田舎町なので用がない夜間はスタッフも帰るらしい。

「空いてるみたいですよ」
3軒目の電話の向こうでそう告げてると言う。
「いくらですか?」
「一泊朝食付きで$150、だけどこの時間なので、$10オフでいいって言ってます」
150が200でもこちらに選択肢はない、事態はベッドがあるかないか、なのだから。
「じゃあ、そこをおさえてください。今すぐにチェックインに向かいます、と」
レセプションのお兄ちゃんはなにやら世間話をした後、電話を切り、カンタンな地図を書いてくれた。
「ありがとう、本当に助かった。クルマで寝ないで済むだけで感謝です」
「いやあ、助けになってよかったですよ。どこの国の人ですか?」
「日本人です、実は今日、東京から飛び立ってきているんだ」
感謝を告げながら握手をして『ホリデイイン~』を後にした。
チップを渡すのも不躾な感じがしたので、彼の行為に甘えておくことにした。
深夜のカナブの町はひと気どころか、行き交う車もいない。

直後に『Parry Lodge』にチェックイン、レセプションでカギをもらう。(写真8)
ロッジの名の通り、別棟に移動する形でドア前に車を止め、中に入ると
オールド・ファッション・スタイルの部屋が出迎えてくれた、部屋は映画スターをテーマにしているようだ。
何時間起きていて何時間移動したのだろう、時計はすでに2時を指している。
時差を合わせて計算する気にもならず、シャワーを浴びただけでベッドに倒れこんだ。
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