St. Colomb's Cathedral @Derry [Northern Ireland (UK)]

―DAY7― 10月3日
ここの朝食もホステルにしてはご機嫌な品揃えだった。
長テーブルの上にはトースト用のパンの他にベーグル、シリアルが数種置かれ、ジャムは5種類ほど並び、
バスケットにはフルーツ、冷蔵庫にはヨーグルトとホテルに負けないラインナップが用意されていた。
惜しいことにどういうわけかコーヒーがなくて、ティーバッグの紅茶で「お茶を濁す」しかなかったが、
そこにはタップリのミルクを注ぐことができ、「英国式」を堪能できたのでそれはそれで悪くはなかった。

オフ・シーズンということもあり、ホステルはガラ空きのようだった。
5つの3段ベッドが置かれた部屋には後からドイツ人男性がチェックインしてきただけ、
その彼も一緒にいた地元っ子らしいガールフレンドと出ていったかと思うと、
そのまま朝までというか、こちらがチェックアウトする時間になっても帰ってくることがなかった。
荷物沖にチェックインしたのかよ、とツッコんでみても誰もいないし、愛の行方は誰にもわからないのだろう。
結局、ドミトリー独り占めの奇妙な滞在、広過ぎるシングル・ルームだぜ、これじゃあ。
朝食のため、キッチンに来ても誰もおらず、ここも貸し切りのご様子。
夕食のパスタを調理した時にはキッチンを使う夫婦がいたり、シャワールームで男性と擦れ違ったり、
どうやら他の部屋には客がいるようだったが、なにしろ宿泊者と顔を合わせないみごとなオフシーズン滞在だ。

しばらくするとキッチンにアジア系の女のコが一人で入って来て、ミルクやヨーグルトの在り処を尋ねられた。
香港人の彼女はこちらに留学中、そこに香港から母親が訪ねてきて、一緒に小旅行をしているらしい。
「母さんは朝食を摂らないから旅のリズムが合わないのよ」と嘆いているのが可笑しかった。
「こちらの生活はどう?」
「香港と物価が変わらないから意外と暮らしやすいかな」
彼女は10時のバスで次の街へ向かうため、慌ただしく朝食を詰め込んで、旅立っていった。
入れ替わりで二日酔いだか寝不足だか、ゲンナリした顔の若い男の子がやって来た。

「クラブで朝まで騒いでいたんだ、反動でテンション上がっちゃって寝れなくて」
インド系ニュージーランド人で学生だという彼は表情とは違って明るい口調で申し訳なさそうにそう説明した。
「そういう顔をしているよ。お茶でも飲めば?」
「ありがと、そうする。タバコ吸ってもいいですか?」
「ここが禁煙じゃないなら、かまわないよ」
そういうと丁寧に礼を言い、缶のケースを取り出すとタバコを巻きはじめた。

「こっちの人って、巻き煙草を自分で作る人、多いよね?」
カフェなどでもよく見かけたので、そんな質問を投げかけてみた。
「こっちじゃタバコ高いんですよ、手巻きだとちょっと安いんです。吸います?」
「ありがと、でも吸わないから、気にしないで」
「あ、僕が寝れないのはジョイント(大麻)のせいじゃないですよ。
こうやって巻き煙草作っていると『ハッパか』っていわれるけど僕はクラブでもハッパはやらないんで」
「ダイジョウブだよ、疑ってないから」
その後は日本のマンガやアニメのハナシが大いに膨らみ、
紅茶やフルーツを楽しみながら、キッチンでゆったりした午前を過ごした。

しばらくしてチェックアウト、といってもデイパックひとつの身なので、
事務所のスタッフに「じゃあね」といって声をかけただけで出かけることになった。
ゲール語で「樫の森」を意味する名がついたこの街はアイルランドで唯一、城壁が完全な形で残っている。
その城壁には7つの門があるというのでそこを辿るように小さな城砦都市のなかを歩いた。(写真3)

南側のビショップ門のそばの大きな『St. Colomb's Cathedral(聖コロンブズ大聖堂)』に戻ってきた。(写真4)
昨日は閉館時間に間に合わず、見学することができなかったので、あらためての訪問で中に進んだ。
ここにも美しいステンドグラスがあり、かつてこのこの街が包囲された経緯などが刻み込まれている。
この街に来てからステンドグラス三昧、ちょっとシアワセな「三昧」、これなら毎日でも歓迎だ。

城壁内はアパートがあり、商店があり、食堂があり、普通の生活が営まれている。
通りを普通にクルマが走っていくが、城門部分は狭くなっていて、譲り合う形で擦れ違っていく。
大聖堂から2ブロックほど歩いた城砦の東側にはショッピング・モールが2つ3つ肩を並べていて、
馴染みのあるブランド・ショップのロゴがあちらこちらにあふれ、
チェーンのファストフードやカフェは家族連れや学生たちで混んでいて、ニギヤカだ。
石造りの城壁や不便な城門とモールやショップのハデな看板との時間軸の乖離を感じる、というと大げさかな。
普通に暮らしている人や働いている人がいるのは当たり前のことなのだが、
17世紀と21世紀の同居は余所者にとっては不思議な感覚に囚われたような気分になる。
週末のニギヤカな人出がそのギャップを余計に色濃くしているようだった。
そう、今日は土曜日、週末の混雑というわけね、のんきな旅行者に曜日はないからなあ。
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