Causeway Coast @Belfast [Northern Ireland (UK)]

日が落ち切った頃、バスは『ベルファスト港』に到着、セキュリティ・ゲートを過ぎ、制限エリアに入っていった。
バカデカイ客船に沿うように停まると、中国人グループを含めたほとんどの客が降りていき、
車内には10名に満たない人数が残されただけで、ガランとした感じになってしまった。

『ジャイアンツ・コーズウェイ』からの帰り道はちょっと遠慮して最前席を明け渡し、最後部の席に座った。
最後部は4組ほどのカップルだか、お仲間だか、グループだかに囲まれていて、岩場での感想話が尽きない。
時折話しかけられはしたが、彼らの会話にはところどころ、
「船が待っている」とか「クルーズで」というバカげた単語が挟まるので、
年配者特有のしつこく繰り返される内輪のジョークと思い、あまに会話に身が入らなかった。
なんでクルーズ客が18ポンドのやっすいデイ・ツアーにいるんだ、というクエスチョンマークが消えずに、
途中からは一人文庫本に目を落としていた。

「キミはドコの国の人? その本はどうやって読むんだい?」
最後列、5人がけの席で肩を並べていたの男性が無邪気にこちらの手元を覗き込んできた。
「日本からです。アイルランドを巡ろうと10日ほどの短い旅です」
そう答えながら、文庫本を差し出し、文字の追い方と書かれた文章の意味を説明すると、
4組のペアが食いつくようにこちらに向き直った。

「日本語かあ、すごいなあ。中国語はよく目にするけど日本の本は初めてだ」
「右に開いていくんだね、この本。それにしてもまったくなにが書いてあるかも想像できないな」
「日本語はキャラクター(文字)が3種類あるのよね、どう使い分けるの?」
「あなたもカンジ・キャラクターを書けるわけでしょ?」
三方から囲まれ、たちまち囲み取材のようになってしまった、
もっとも興味は自分に向けられたものでなく、「日本語」という有名タレントへだが。
文庫本をきっかけに個人的な話しに踏み込むとさきほどのクエスチョンマークのナゾが少しずつ解けてきた。

「ぼくたちはクルーズでマンチェスターからやって来て、ここ数日、ベルファストに滞在して、
エクスカージョン・ツアーで今日のこのツアーに参加したんだ」
「明日はエディンバラ入り、対岸のスコットランドへ渡る予定」
「あの中国人の団体さんも同じクルージングからだよ。
もっともあちらさんはロンドンからエディンバラまでのパート参加のようだけどね」
「ほおお。あなたたちは?」

「北欧をスタートしたのは2週間ぐらい前かな。残り1週間、この辺を巡って、スタート地点に戻るのさ」
こちらがアレコレ掘り下げていく必要もなく、4組のペアは口々にアレコレ説明してくれた。
彼らはそのクルーズで仲良くなったグループ、さっきまでの話はしつこい冗句ではなかったのだ。
クルーズでベルファストに到着し、「エクスカージョン」としてこのデイ・ツアーに参加したわけで、
どうりで国籍もまちまちの夫婦だかカップルだかのばらばらグループに共通項が見い出せなかったわけだ。

そんな話を重ねていると「普段と異なるルートで街へ帰る前に港に寄る」とドライバーがアナウンスした。
もっとも普段を知らないので、そういわれても大人しく席に埋まっているだけだが。
バスはバカでかいクルーズ船の他にはなにもない広い港に入ると、船のそばでクルーズ客だけを降ろした。
中国人の団体さんは2つか3つあったようでそれぞれが引率のガイドが掲げる旗に従って船に戻っていく。
広東語と北京語のグループがいたのでそれぞれ香港チームと大陸チームのツアー・グループだろう。
「では、楽しいクルーズを続けてください」
「君も楽しい旅とセイフ・トリップで」
4組のペアと握手して別れの言葉を交わすと、ドライバーがあらためて車内を確認し、バスは港から動き出した。
今日一日、豪華客船の人たちと同じツアーで巡っていたわけね、そう考えると少しおかしくなってきた。
だって18ポンドのデイ・ツアーだぜ、こちとらドミトリー滞在のバジェット・トラベラーだぜ。

夕食が気になりはじめる時間にベルファストの街の中心に戻ってきた。
ドライバーは港に寄ったため、遠回りになり、帰着時間が遅くなったことをマイク越しに詫びていた。
重ねて集合地点であるツアー会社まで戻るが、希望であれば市庁舎前で降りてしまうことも可能だと告げた。
『ヨーロッパ・バス・センター』そばのツアー会社まで行く方が宿への帰り道は短かったが、
街の中心で降りたほうが夕食のアイデアが広がりそうなので、ここで降りてしまうことにした。
「今日一日ありがとう、とても楽しめました」
ドライバーと握手して別れた、掌にチップを潜めてもよかったが、そぐわない感じがしたのでやめておいた。

日帰り旅の終わり、出迎えてくれたのはピンクに染まったド派手なベルファスト市庁舎だった。(写真9・10)
「ん?ナニコレ?」と一瞬頭をひねったが、今日から10月、ひょっとして「乳ガン撲滅キャンペーン」かな。
いわゆる「ピンク・リボン運動」、なんでそんなことを知っているかというと、
その運動をNFLが全面的にサポートしているため、現地取材で目にしたこともあり、
また10月のすべての公式戦では選手たちはかならずピンク色のアイテムを身に着けている。
ピンクのシューズ、グローブ、サポーター、タオル・・・この月だけフィールドの選手はピンク色の煌めきともに走るのだ。

もっともベルファストでその運動が繰り広げられているかはわからない、
なにせこの街の市バスはド派手なピンク色、「belfast bus」でググってみるとわかりますぜ。
ことによるとただの街のイメージ・カラーなのかもしれない、機会があったら誰かに尋ねてみよう、小さな宿題だな。
さあて、今夜はナニを食べよう、夜はまだ更けないぜ。
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すべてが初見で新鮮です。すてきな旅行記ですね。
by starwars2015 (2017-04-16 11:27)
nice ありがとうございます
この風景BSで見た事あります
by musselwhite (2017-04-24 14:53)
>starwars2015さん
返信遅くなりました~
あまり有名観光地ではないですからねえ(笑
雰囲気だけでも伝われば幸いです!!
by delfin (2017-04-26 18:13)
>musselwhiteさん
コメントありがとうございます。
あらあ、そのBS観たかったなあ~
by delfin (2017-04-26 18:14)